消防

消防士のリアルなパワハラ事情—暴力の連鎖を断ち切る

あにたろ

「お前は俺のこと舐めてるだろ」

P係長は、火のついたタバコを後輩の腕に押し付けた。

「いやー、Pちゃん係長の指導は素晴らしい!」

A本部長は、この指導を高く評価していた。Aさんだけではない。組織の上層部が皆、そうだった。


はじめに

初めまして。30代の元消防士、あにたろと申します。

この記事では、実際に経験したパワーハラスメントについて綴ります。内容は90%が事実で、個人情報保護のため一部フィクションを含みます。


P係長という存在

P係長の辞書に「ハラスメント」という言葉はなかった。

  • あいさつをしても無視するが、P係長の存在に気付かずあいさつが遅れた同僚は、殴られ、蹴られていた。
  • 夕食はみんな同じものを食べるが、気に入らないものが出れば、関係のない僕が殴られた。
  • 殴られない日の方が少なかった。

極限の労働環境

勤務は24時間。朝の8時半から翌日の8時半まで。

通常5時間程度の仮眠時間があるはずだが、P係長はこう言い放った。

「仕事を覚えてない奴が寝れると思うなよ」

午前3時まで雑務をさせられ、わずか2、3時間の仮眠の後、朝の業務に移行する。

8時半になっても帰れるわけではない。

「自己研鑽しろ。仕事覚えてから帰れ」

この言葉のもと、昼前まで業務をこなす日々が続いた。当然、自己研鑽という名目で残業代はない。


限界を迎えた心と身体

この生活を半年続けた結果、私の心身は限界を迎えていた。

  • 道端で倒れ、救急車を呼ばれそうになったこともある。
    • しかし、同僚に知られるのが怖くて、逃げるように這って家に帰った。
  • 日中、作業中に突然の眠気で倒れることもあった。

診断はナルコレプシー

完全に心身ともに限界状態で働いていた。


異動、そして回復

1年後、異動でP係長の下を離れることができた。

しかし、正常な精神状態に戻るまでには2年の歳月を要した。

「あにたろ、当時から成長したなぁ」

そう言われることがある。

だが、それは成長ではない。ただ、壊れていた心が癒えただけなのだ。


転機となる出来事

数年後、衝撃的な出来事が起きた。

「お前は俺のこと舐めてるだろ」

居酒屋でP係長が後輩にタバコの火を押し付けた。

その場面を目撃した客が警察に通報し、長年続いてきたハラスメントが明るみに出た。

後輩は報復を恐れながらも、A本部長への聞き取り調査でP係長を訴える意思を示した。

しかし、A本部長はこう言った。

「いやー、Pちゃんには入学時期の子供が2人いる。起訴されたら彼らの人生はどうなる?」

この圧力によって、後輩は訴えを取り下げた。


崩壊していく組織

この職場では2人に1人が5年以内に退職していく。

多くの人生を壊しながらも、自分たちが傷つくことを恐れ、隠蔽する。

ハラスメントを容認してきたA本部長にも、大きな責任がある。

好きになれたはずの仕事を、好きになれなくさせられた。


さらに衝撃的な出来事

その後、さらなる悲劇が起こる。

A本部長の一人息子が、社会人になって半年後に命を絶ったのだ。

理由は知らされていない。

しかし、私は感じた。職場環境に起因するものではないかと。

因果応報」という言葉が脳裏をよぎった。

だが、若い命が失われることに、どんな理由も正当性もない。

この悲劇は、ハラスメントが誰も幸せにしないという事実を突きつけた。


2020年、パワハラ防止法の施行

2020年、パワハラ防止法が施行された。

企業に具体的な防止措置を義務付けるこの法律により、

組織もアンケート実施や直接的な暴力の禁止など、対策を始めた。

過去の行為が人権侵害や傷害罪に当たることを突きつけられ、彼らは今、恐れている。


私が選ぶ道

私は、若い世代には同じ思いをさせたくない。

暴力的な指導で従わせることは簡単かもしれない。

しかし、私は対話による指導の道を選ぶ。

それは遠回りでも、人としての尊厳を守る唯一の方法だと信じている。


オススメ書籍『パワハラ上司を科学する』

なぜパワハラが起こるのか、そのメカニズムに触れた本。

自身がパワハラ上司にならないためにはどうすればよいかの心構え、トレーニング、ルールを教えてくれる一冊。

全ての消防本部に3冊くらい置いてほしい。

ABOUT ME
あにたろ
あにたろ
30代の元消防士。歴15年。 自身の経験や感じたことを綴ります。 生きづらさを感じる人たちへ――。 私の言葉が、少しでも人生の助けになりますように。 身バレ防止の為、一部フィクションを交えて記事を書きます。
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