本・書評

「世界に一つだけの花」が嫌いだった自分が守りたかったもの

あにたろ

小学生の頃、あの曲を歌うたびに違和感を覚えた。
胸の奥がざわつき、落ち着かない気持ちになった。

「世界に一つだけの花」。
確かに言葉としては美しい。
しかし、「ありのままでいい」「みんなが特別」という歌詞には、どこか現実味がなく、納得できなかった。

「みんな違って、みんな良い」。
確かにそうかもしれないが、現実はそう単純ではない。
努力しても評価されない人がいる。

「ナンバーワンにならなくてもいい。みんなオンリーワン。」
そう歌うたびに、心の中で反発する気持ちが生まれた。
「本当にそうなのか?」と。

「オンリーワンであることに誇りを持て」
この言葉を、「何もしなくても価値がある」と受け取る人もいるかもしれない。
だが、オンリーワンとは、何かの分野で秀でた存在のことではないのか?
結局、それは言い換えたナンバーワンではないのか?

花屋に並ぶ花は、選び抜かれたものだけだ。
本来、あの歌が届けるべきなのは、そこに並ぶことすらできなかった花のはずではないか。

私が違和感を覚えたのは、その現実を知り始めた頃だった。
「みんなが特別」という言葉が、どうしても受け入れられなかった。

とはいえ、歌わないという選択肢はなかった。
歌わなければ、先生に注意される。
周囲と違う行動をすれば、目立ってしまう。

納得できないまま歌い続けることで、自分の気持ちを押し殺しているように感じた。
歌詞を口にするたび、本心とは違う言葉を言わされている気がした。

「個性を大切に」と言いながら、全員に同じことを求める。
それが矛盾していることに気づいたとき、自分の違和感の正体がわかった。

「みんな違うはずなのに、同じように歌うことを求められる」
その状況が、私には納得できなかったのだ。

もし、当時の自分に声をかけられるなら、こう伝えたい。
「その違和感は間違っていない。それは、自分の考えを大切にしようとする気持ちだったんだ」と。

当時、大人たちは「子どものこだわり」として気にも留めなかった。
しかし、あの感覚は、自分の価値観を守ろうとする自然な反応だったのだと思う。

それに気づかせてくれたのは、友人に勧められて読んだ 『自分の中に毒を持て』 だった。

岡本太郎さんの言葉の中に、私は自分自身を見つけた。
彼は子どもの頃、いじめられた経験がある。
そして、大人になっていじめっ子にこう言われた。

「君だけは言うことを聞かなかったから、いじめたんだ」

その言葉を聞いた瞬間、彼は気づいたという。
「自分はあの時、自分自身を守り抜いていたのだ」 と。

オンリーワンとは、それだ。

本当のオンリーワンとは、与えられるものではない。
自分自身で見つけ、積み上げていくものだ。

「誰もが特別」ではない。
自分が特別になりたいなら、それに見合う努力が必要だ。

あの時、違和感を覚えた自分は間違っていなかった。
今なら、それをはっきりと言える。

ABOUT ME
あにたろ
あにたろ
30代の元消防士。歴15年。 自身の経験や感じたことを綴ります。 生きづらさを感じる人たちへ――。 私の言葉が、少しでも人生の助けになりますように。 身バレ防止の為、一部フィクションを交えて記事を書きます。
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